#18 「シルエット」 撮影地:岡山県玉野市

 「玉野市」と聞くと、最初に「ん?」という違和感を覚える。その違和感はどこから来ているかというと、「玉野」という地名と 場所のイメージがすぐに一致しないことによる。といっても、玉野は岡山のどこら辺りにあるのかという低レベルな話ではない。子供の ころから、フェリーに乗って四国に行くときには「宇野」という町に行くと覚えているし、電車で行く場合でも「宇野線」の「宇野駅」 まで切符を買う。つまり、岡山の海の玄関口は「宇野」であり、けっして「玉野」ではないのだ。ついでに言えば、海水浴は「渋川」や 「出崎」に行くのであって、これもまた「玉野」ではない。つまり、私にとって「玉野」という地名は、地図の上だけの架空の地名の ようなもので、それが現実の記憶と結びつかない。現実感のない蜃気楼のような町なのだ。
こういうことは些細なことだけれど、地盤沈下の著しい地方都市にあっては案外重要な問題かもしれない。神戸には神戸港があり神戸駅が ある。横浜もまたしかり。洗練された港町や中華街のイメージは直接その地名と結びつき、記憶に残る。住んでみたい町、行ってみたい町 を考えたときに、その場所のイメージと地名が結びつかないような町が候補に挙がることはまずないと思う。「玉野」と「宇野」。一体で ありながらイメージの分離した奇妙な名前。それは、実体と影のような関係であり、今のところシルエットになっているのは「玉野」で あるようだ。

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