#20 「孤独すら友にして」    
2005年1月12日

 いつの間にか暗い色の雲が空を覆い始めた午後。狭い六島もほぼ歩きつくして港に帰ってきた。人影もなく、なんとなく
物寂しい風景のなかを、一羽のカモメがゆっくりと頭上を滑空していった。そのとき、子供のころに夢中になって読んだ
「かもめのジョナサン」という本のことを思い出した。なにしろ小学校の時の話なので、詳しい内容は忘れてしまったが、
主人公のカモメ、ジョナサン=リビングストン、は、飛行技術を磨くことに夢中で、なんとか宙返り飛行をやり遂げたいと
試行錯誤を繰り返していたが、なかなかうまくいかず、時には失速して墜落したり、仲間からは頭のおかしいやつと
白い目で見られたりしていた。それでも彼はあきらめず努力し続けた結果、ついに宙返り飛行を成し遂げるという話だった。
まあ、多少違うかもしれないがそんな話だっただろう。そんなことは長い間忘れ去っていたが、この手のストーリーが自分は
たいへん好きであり、自分自身の生き方にも大きな影響を与えていることにいまさらながら気がついた。そういえば、同じ頃
好きだった本に堀江謙一氏の「太平洋ひとりぼっち」がある。全長わずか5m程度の小さなヨットで、単独太平洋横断をやって
のけた堀江氏のノンフィクションだが、この本も何度も読んだ記憶がある。たとえ変人扱いされようとも、周りから理解を得られ
なくても、自分のやりたいことを精一杯やること、自分の信じる道を迷わず歩むこと、僕にとっての人生の価値とはそういうことだ。
ただし、そのためには孤独すら友にできるだけの覚悟と強い意志が必要になる。自分にはそれが備わっているのだろうか。
そんなことを考えているうちに、港に船が戻ってきた。

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