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日の傾き始めた時刻は、どこかけだるく物悲しい雰囲気がある。今日という日が終わりに近づきつつあるという悲しさなのか、 そろそろ疲れも出始める時刻だからなのか、それとも、世界が徐々に黄味をまして視覚的に疲弊したような錯覚に陥るからなのだろうか。 牛窓の海は、そのような時でもどこかあっけらかんとして、開放的なさわやかさを残している。そのため、ここで過ごす午後の遅い時間は、 案外心地いい。ただ何もせず、何も考えず、防波堤に腰掛けていれば、快適な空虚さに包まれる。静かな水面に浮かぶヨットは、よく見 ればわずかに揺れながら、午後のけだるい時間のなかで漂っている。 |