#1 「炎の津波」 撮影地:岡山県瀬戸内市錦海湾

凍えるような朝だった。その秋一番の寒波の襲来で、錦海湾は一面白い靄に覆われていた。前日までの晴天と冷え込みで、
もしかしたら見事な朝日が見られるのではないかと思い、夜の空ける前から車を飛ばしてやって来たのだが、
水平線上には雲があり太陽の顔を拝める可能性は低かった。それでも、何があるかわからないのが自然の面白いところで、
日の出直前に雲間が覗くかもしれないことを期待しつつ、カメラを三脚に構えて朝日を待った。やがて、あたりが明るくなり、
日の出の時刻が近づくと、水平線の上のわずかな部分に雲の切れ間が確認できた。しかし、それはまったく雲がない状態とい
うよりも、霧とも雲ともつかないようなもやっとしたものが切れ切れに散らばっているという感じのものだった。空振りに終
わることをなんとなく予感していたが、突然その隙間がオレンジ色に染まり始めた。わずかの間にその色は濃縮されてゆき、
水平線から燃え盛るような赤い波が湧き上がってきた。それはまるで、炎の大波が現れたような神秘的な光景だった。

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