いつも穏やかな表情の瀬戸内海も、たまには不機嫌な表情を見せることがある。台風のときには波が荒れるし、高波で被害を もたらすこともある。この日、夜半から降り続いていた雪も朝にはほぼ上がったが、気温は相変わらず低いままで、空には雪雲がどんより と垂れ込めていた。瀬戸内海はあいかわず波静かで穏やかな表情だったけれど、水面からゆらゆらと立ち上る白い靄が、なにか不機嫌な 思いを抱え込んでいるかのように感じられた。
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