#27 「走り神輿」 撮影地:岡山県笠岡市真鍋島
真鍋島の伝統行事「走り神輿」は、およそ300年の歴史を持つ。始まりは、1696年(元禄9年)八幡神社の新築記念行事であると
言われている。祭りは3日間にわたって行われ、初日を「宵宮」、中日を「本祭り」、最終日を「お帰り」という。実際に神輿が走るのは
本祭りの日だ。
朝9時ごろ八幡神社で地元の子供による棒術と獅子舞が奉納されると、3体の神輿が勢い良く神社境内を飛び出してゆく。はじめに
棒の先に天狗のお面を取り付けた露払い役らしき男性が二人走り、続いて羽織袴に裃(かみしも)姿の先導役が紅白の扇子を仰ぎながら
力走する。そのすぐ後を追いかけるように8人の担ぎ手と一体になった神輿が風のように走り抜けていく。
神社の長い石段を降りた神輿は、疾走と休憩を繰り返しながら岩坪港までの道のりをたどり、大漁旗と青竹で飾り立てられた漁船
にのって本浦港を目指す。通常ならあっという間についてしまう距離だが、1時間近くかけてゆっくりと海を渡る。これは、神霊の乗り
移った神輿を、島の住民誰もがゆっくりと眺められるようにとの配慮による。面白いのは、希望者は誰でも神輿と一緒に船に乗ること
ができ、しびれるような舟歌を聞きながらゆっくりと海を渡ることが出来る点だ。本浦港に着くと、再び狭い家々の間を縫うように走り
抜けて、港近くのお旅所でゴールを迎える。
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