#4
「不思議な植物」    
2005年1月12日

 カメラという機械は、単純に写真を撮る機械であり、それ以上でもなければ以下でもない。それ自体が新たな 発見を促したり、普段見えないものを見せてくれるというものでもない。しかし、不思議なことにこの機械を持って歩くと、 持っていないときよりも格段に面白いものが目に留まる。当然、「被写体を探す」という新しい目的が発生することに由来するのだが、 ただ写真を撮ろうと思っているという事実が、自分にとっての新しい発見を実現せしめ、それによって単位時間当たりの充実度 が増大するするという面白い効果をもたらしてくれる。
 この植物も、もしかしたらどこかで目にしており、決して初めて見たわけでもないし、むしろどこにでもあるありふれたもの なのかもしれない。しかし、かつての自分にとってなんら認識する価値のないものであったものが、カメラによって その価値が高められ、記憶に残るものとなり、そのうえこうして写真になってWebで公開までされるのだから、まったくもってカメラとは 面白くも不思議な機械である。

 後日談:地元の地方新聞を読んでいたら、なんとこの植物の記事が出ていた。名前はツメレンゲ。ベンケイソウ科の多年草で、関東以西 の本州、四国、九州の日当たりのよい岩の上などに分布。瓦の下に土を敷く本瓦ぶきや、かやぶき屋根の上にも成育し、九、十月ごろに白い花 をつけるそうだ。古い町並みの残る倉敷美観地区の家屋の屋根にも分布しているそうだが、最近では家屋の建て替えなどで激減し、レッドデー タブックで準絶滅危惧種指定されている。なお、この葉を幼虫が食べるクロツバメシジミという蝶も準絶滅危惧種になっている。

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