街の風景5NEW |
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1989年の冬、卒業の記念に初めての海外旅行に出かけた。日本では昭和天皇崩御のニュースに世間がざわめいていたが 働き始めると3週間も休みが取れるなんてことはまずないだろうから、行くなら今しかない。というわけで、卒論提出から 卒業式までの間、ヨーロッパをバックパッカーとして放浪することにした。 初めての外国、しかもひとり旅。英語の実力は英検2級だが、現実問題としてまともなコミュニケーションが取れる とも思えない。フランス語は大学1年時に挫折。ドイツ語もイタリア語もスペイン語もまったく知らない。それでも、 何とかなるだろうぐらいの軽い気持ちで出かけることにした。格安航空券でパリへの往復。キャリアは大韓航空。韓国・アンカレジ 経由の北周りなので、直行便よりも時間がかかるが安いに越したことはない。なにしろ昔のことで記憶があやふやだが、 往復で10万円前後だったように思う。あとは、行き当たりばったりだ。現地での移動は鉄道。ユーレイルパスという 鉄道乗り放題の周遊券のようなチケットを買って行った。日本でいえば青春18切符のようなものだろう。英語の時刻表も 購入して、一応ざっと下調べはしておいた。問題は宿だ。「地球の歩き方」という強い味方があるとはいえ、やはり 不安はある。基本はユースホステル利用だが、そうそう便利なところにユースホステルがあるはずも無く、あとは 野となれ山となれだ。ゼミの教授から安く譲ってもらった世界初のAF一眼レフ「ミノルタα7000」を持って初めての撮影旅行 でもある。もっともこのときはせっかくの旅行なので少しは気の利いた写真を撮っておきたいという程度のもので、 カメラの知識も撮影技術もなにもない、まったくの素人であったことは言うまでもない。撮影はいまはなきサクラカラーの ネガフィルムASA200(いまでいうISO200)なので、粒状性はお世辞にもいいとはいえないが、昔なつかしのフィルムということで ご勘弁いただきたい。フィルムはさておき、α7000の描写性能は案外シャープで悪くないのが、ちょっとした驚きである。 | |||||||||